「遅くてごめん」
「いい。掴まれ」
ポケットに手を入れたまま。
くの字に曲がる腕を差し出す紫藤。
「ううん、平気。本当は私がシドに手を貸さないといけないのに」
「あ?」
「シド大丈夫?雪で足元悪いし、やっぱり──……」
紫藤は問答無用でカナコの手を取った。
腹が立った。
お前が俺に手を貸すだと?
いつまでも病人扱いしやがって。
手を貸すのはどう考えても、俺。
自分の方が歩くのが遅いくせ、こっちの心配なんかしてくんな。
そんな気持ちで、ぎゅっとカナコの手を握る。
「行くぞ」
カナコはその手の力強さに何も言えず。
黙って歩いた。


