そんな中。
黒い車が、女を連れ去った。
女の知り合いかもしれないし、そうでなければ乱暴でもされるのか。
どちらにしても俺には関係ない。
そう言い聞かせて、再び車に乗り込んだ。
紫藤との待ち合わせの場所。
そこで待っていたのは、さっき交差点に落ちていた女。
──カナコ。
あの時、俺が逃げたものが。
手を伸ばせなかったものが。
紫藤からのツケとなって、返ってきた。
”ユキさんはいつの間にか 変わった”
“きっと私も 少しは変われた”
”始まりはたぶん 雪の日”
”あの交差点”
「………」
ユキはしばらくの間。
自分の手のひらを、見下ろした。


