それから、ユキの周囲は騒がしくなった。
野間が危惧した通りだった。
『紫藤さんをどこへやった』
『紫藤さんを返せ』
紫藤を慕う人間の、怒り、不安、恨み。
もしくは、
これらを面白がる人間の、好奇心、闘争心、功名心。
これまで野間が受け止めていたもの。
それ以上のものが、ユキへ一点集中した。
大半のもめ事は、露天街やZ地区の人間に任せるが。
喧嘩屋のような、組織がらみの喧嘩も少なくない。
いちいち相手にするのも面倒だと思ったユキは、外出時にサンコンを連れるようになった。
「私……こんなに幸せなことがあって、いいんでしょうか」
サンコンは喧嘩の頻度が増え、とても喜んだ。
しかし、そうなるとAnBarの営業がまともにできない。
どうせ店を閉めるならと、この機会に改装工事を行うことになった。


