ユキは、トウジの運転する車で自宅へと帰った。
シャワーと、着替えをしに。
家の中はものの見事に散らかっている。
カナコと離れている時間だけ、少しずつ散らかっていった部屋。
今のユキの頭の中と同じ。
片付けられないものばかりが、どんどん積もっていく。
シャワーを終えたユキは、洗面台に立った。
歯ブラシを取ろうと手を伸ばせば、並んで置かれたカナコの歯ブラシとコップに目が留まる。
『ユキさん』
カナコの声が聞こえた気がした。
『また新しい歯ブラシ開けちゃったんですか?』
『もうっ。歯ブラシは使ったらここにしまってください』
ぷくっと膨らまされた、やわらかそうな頬。
怒ってるみたいなのに、全然怒れてない。
可愛いカナコ。
ユキの頭の中で、勝手に再生される。
ふと、目の前の鏡。
そこに映った自分の顔を見れば。
「………」
たった一人、寂しく笑う男がいた。
鏡から目を逸らし、支度を続けた。


