「………」
──数秒後。
千景は床に転がっていた。
ユキは殴った姿勢のまま、千景を見下ろした。
「ソッチの状況は?」
「……異常、ナシだ」
「そう」
ひっくり返ったまま答えた千景。
カナコの言う通り、本人は元気にしているらしい。
ユキが踵を返したところで、トウジが入口から入ってくる。
「あ。ユキさんお疲れ様です」
軽く挨拶を交わしたところで、トウジがフロア奥へと視線をやった。
「リンコ。出勤の時間だぞ」
「ああ。ホントね。すぐ行く」
トウジは隣町からシトウへ引っ越し、仕事まで辞めた。
今ではリンコの店の黒服兼、秘書兼、ドライバー。
何を目指しているのかはよくわからないが、とにかくリンコの傍にいる。
「ユキさん今日車ですか?よかったらマンションまで送りますが」
トウジの言葉に甘え、ユキはリンコと共にAnBarを出た。


