「だから」 「………」 「僕は、お前がこの世で一番嫌いだ」 「……なんでだよ」 「これ以上トチ狂って、あの人の幸せを奪ってくれるな」 踵を返した千景。 紫藤は、遠ざかっていくその背中を目で追った。 「……本当。馬鹿ばっかだな」 月明かりに照らされた、自分の両手を見下ろす。 街……。 カエデ……。 カナコ……。 「………」 ゆっくりと、拳を握りしめた。