「お前と一緒にすんなよ」
「………」
「お前は自分のモノじゃなきゃ気が済まないんだろうけど、僕は違う」
やがて千景は目を伏せた。
緩く広げた自分の両手を見つめている。
「僕は彼女が笑って生きられるのなら、その場所に送ることができる」
「………」
「僕が好きなのは、あの人自身。僕の気持ちがどうなるかなんて、どうでもいい」
千景のその愛し方は。
紫藤には到底、理解できない。
身を呈してカナコを守ろうとしたことと、同じ。
自分の身体も。
自分の、心さえも。
まるで、どうでもいい。
自己愛がない。
そのくせ、カナコだけは狂ったように大事にする。
やっぱり、地下の売人は。
……異常だ。
紫藤はそう思った。


