その晩。
紫藤はなかなか寝付けなかった。
腹が立っていた。
「……クソが」
多夜にしても、アオイにしても。
好き勝手言いやがって。
寝がえりを打ち、目を閉じる。
瞼の裏に、床に散らばった写真が浮かんだ。
……ウザってぇ。
バサ、と布団を蹴り上げる。
ベッドを抜け出し、リビングで水を一杯飲む。
すると。
「……何の用だ」
灯りのない闇の中、ぬるりと現れた──千景。
「薬抜きは地獄だろ」
静かに、紫藤の隣に立った。
「そうでもねぇよ」
千景は「タハッ」と馬鹿にしたように笑った。
「残念だけど、ドラッグってのはそんな簡単に終わらない」
「………」
「今まともになった気でいるなら、それはやっとスタートラインだ。おめでとう」
パチパチパチパチ……、と夜に控え目な拍手。


