「馬鹿野郎が……」
顔を上げ、多夜を睨みつける。
「じゃあ今、俺たちは瑞生から逃げてんのか」
「いいや。逃げきることさえできなかった」
「………」
「最終的には、カナコがここに残ることを選んだ。そして──……」
アオイの目が、紫藤を鋭く射貫く。
「瑞生は、カナコを止めなかった」
「………」
紫藤はしばらく沈黙した。
何かを考えるように、瞳を伏せた後。
「ははっ!」と、乾いた笑いを零し、
「どいつもこいつも馬鹿野郎だな」と、吐き捨てた。
「多夜。立て直すぞ」
「………」
「シトウが瑞生に負けた。今、街は荒れてんだろ。それなら、なおさらだ」
「……怜」
「俺が戻れば済む話。そうだろ?」
多夜は何も答えない。
「シトウの格は落とさねぇ。俺は立ち続ける。取り返す。──全部だ」


