「悪かった」 「ううん。ごめんね、後ろ見てなかった」 「違げぇ」 紫藤は手の中にある温度を、強く握りしめる。 「俺が、お前を壊したことだ」 「………」 カナコは一度目を見開くと。 「……ほんとに、シドが戻ってきた」 柔らかく、微笑んだ。 「俺は、まともになる」 「うん」 「もう、お前を傷つけたりしねぇ」 「うん」 紫藤は、握るカナコの手を、ゆっくりと自分の口元に寄せた。 「お前が、好きだ」 まっすぐなその瞳に、カナコは縫いつけられたように動けなかった。