「………」
カナコは両手で口元を押さえ、パチパチと瞬きをしながら。
口をもぐもぐと動かし、飲み込んだ。
「美味しかった……」
「そうかよ」
「シド、料理できちゃうんだ」
「できるってほどでもねぇよ。焼き飯くらい誰でも作れんだろうが」
「だって、料理とかしそうじゃないもん。びっくりした」
カナコはやっぱり嬉しそう。
紫藤はその顔から視線を逸らし、焼き飯を口に入れた。
なぜだか、さっきよりも美味しく感じる。
「ねぇ、シドの好きな食べ物ってなに?」
カナコはダイニングテーブルの向かいに腰かけ、両手で頬杖をついた。
紫藤は思い出した。
まだ心を閉ざし、ろくに会話もできなかった頃。
カナコは、同じことを聞いてきた。
「なんだろうな」
「ないの?好きなもの」
「食うモンにはこだわりがねぇ」
「嫌いなものは?」
「ねぇな」
「そっか」
前も、今も。
好きな食べ物は浮かばなかった。
ただ、
──『シドの好きなものって、なんだろう』
──『元気になったら、教えてね』
好きなものなら。
目の前にあった。


