「雪の中、彼に捨てられたときも。彼が死んだときも……。シドのおかげで、生き直すことができた」
「……馬鹿だろ、お前」
「馬鹿、なのかな」
「………」
「シドは私に全部忘れろって言ったけど。私、やっぱり忘れられなかった」
カナコは眉を下げて、柔らかく微笑む。
紫藤は奥歯を噛みしめた。
──抱きしめたい。
その衝動に、指先だけが動いた。
どうして、俺はコイツを傷つけた。
どうすればいい。
どうすれば取り返せる。
この穢れた手で、今さら何をしてやれる。
壊したかった。
でも、同じくらい。
俺はコイツを守りたかった。
ただ、普通に──愛したかった。
……そのはずだった。


