──紫藤 怜は、朝日に照らされたカナコの顔を眺めていた。
それはあまりに美しい景色だった。
今の彼の目には、痛いほど。
「……眩しい。カーテン閉じろ」
カナコは立ち上がり、紫藤がいるベッドに影をつくるように、カーテンを半分だけ閉じた。
その表情には、まだ喜びが浮かんだまま。
紫藤はそんなカナコを。
……『かわいそうな女』だと、心から思った。
視線を合わせただけで喜ぶ。
言葉を返しただけで喜ぶ。
食事をとっただけで喜ぶ。
はてには、
外の景色を見ただけで、喜ぶ。
かわいそうなくらい。
カナコはずっと、紫藤が生きているだけで喜んでいた。
その度に。
紫藤の頭には、同じ疑問が浮かぶ。
なぜ。
この女が、ここにいる。
どうして、自分のそばから離れない。


