「正直僕は。街に戻ると決めた時点で、今度こそ死ぬって思ってました」
「なんで……」
「紫藤さん不在のまま抗争に負けた。なのに、この事情はとても説明できるものじゃない」
「………」
「なにせ、僕と多夜さんはシトウを捨てた。紫藤さん個人を救うために」
野間は、妙に穏やかな顔をしていた。
「だから。シトウの街の恨みつらみは、一度紫藤さんに殺された、この僕が引き受けるのが妥当。……そう、思ってました」
シドを生かす。
そのために野間は、死ぬ覚悟でシトウに戻ってきた。
私は泣きたくなって、俯いた。
「でも」
「………」
「助けられてしまいました」
その言葉に顔を上げると。
さっきよりも晴れやかな顔が、そこにある。
「瑞生さんや地下の売人が、シトウから僕を守ってくれてます」
「……ふたりが?」
「なんで僕なんかに手を貸すんだって聞いたら、素っ気なく『お前のためじゃない、かぁこのためだ』って言われました」
「………」
「この右目の傷痕のおかげで、──僕は今、生きることができています」
その言葉に。
もう、『ごめんね』とは。
言えなかった。


