「どうっすか、紫藤さん。少しはまともになりましたか」
「少しずつだけど回復してきてるよ。身体はまだ十分には動かないけど、最近は普通に話したりする」
「もともと話せなかったんですか?」
「……知らないの?」
野間は「はい」と頷いた。
「僕、紫藤さんの中じゃ死んだことになってるんで」
「……え?」
「多夜さんから紫藤さんの壊れっぷりは聞いてはいましたけど。身体が動かないことと、自発的に何もしようとしないってくらいですかね」
だいたいは合ってる。
だけど、どうして。
「野間くんは、シドに会わないの?」
「今更、生き返る必要もないでしょ」
「そんなことない」
「いえ。僕は死んだままの方がいい」
あまりにはっきりとした物言い。
私はまだ納得ができない。
すると野間は、残った左目でどこか遠くを見つめた。
「紫藤さんにやられる直前。僕は、紫藤さんに一つの呪いをかけた」
呪い……?
「だから、僕はこのまま消えていた方がいい」
「………」
「それに」
野間の視線が、やっとこちらに戻ってくる。
「多夜さんと役割分担です。僕はシトウの後処理に忙しいんで」
そこでちょうど野間のスマホが鳴った。
電話に出た野間は、二言三言交わすと「すぐに行く」と通話を切った。
「すません。行かなきゃいけなくて」
「うん。ごめんね、急に」
「いえ、話せてよかったっす」


