私は薬と水を手に持って、シドのそばに駆け寄った。
「シド、身体痛い?」
「………」
「ここ?」
腕に触れながら、痛む場所を探す。
「起き上がれる?薬持ってきた」
薬を飲ませてから、しばらくシドの背中を擦り続けた。
これで眠れるといいけれど。
「甘やかしすぎ」
千景が音もなく近づいてきた。
「……甘やかすもなにも、まだシドにはできないよ」
「わかってる?ママは帰るんだよ」
「当たり前でしょ。そのためにこうして──」
「このままだとソイツ、ママなしじゃ生きられない人間になる」
私は千景を見た。
リビングから漏れる薄明かりを背にした千景のその顔は、よく見えない。
「今だけだよ……」
今はまだ、この手が必要だ。
私はシドが眠りにつくまで、そばを離れなかった。


