「シドの好きな食べ物って、何?」
「………」
「多夜さんとアオイに聞いたけど、二人とも知らないって」
「………」
「私もわからなくて。もっといろんなこと話しておけばよかった」
シドとはいろんな話をしてきたはずなのに。
こんな話は、全然できなかった。
「シドの好きなものって、なんだろう」
「………」
「元気になったら、教えてね」
シドが食べ終わると、空の食器を持ってキッチンに戻った。
「ごめんね、みんなの分もすぐ用意するね」
ハンバーグもすっかり冷めてしまった。
温め直さなきゃ。
コンロに火をかけたところで、後ろから小さなアオイの声が聞こえた。
「お前だと、食うんだな……」
「無理させちゃったかな?お昼ご飯失敗したって正直に話したら、食べてくれた」
食べなきゃかわいそうだって思われたのかもしれない。
私は、アオイがどんな顔をしているのかを見もせずに。
ただ、冷めたハンバーグを温め直した。


