獏は本当に忙しいみたいで、住所を聞き取るなり『薬が出来たら送る』とだけ言って電話を切った。
「千景、ありがとう」
スマホを返すと、千景は辺りをきょろきょろと見渡す。
「で?ここ、寝る場所はあるの?」
「寝る場所?」
「多夜と同じ部屋は勘弁。ママと同じ部屋がいい」
私は目を丸めた。
もしかして。
「千景も一緒にいてくれるの?」
「言ったじゃないか。僕はどこにでもついていく。ママからは離れない」
ユキはここに監視を置く、と言っていたけれど。
まさか千景が来てくれるだなんて。
「言っとくけど、納得はしてないよ」
「……うん」
「とっとと片付けて帰ろう。どうにもならなきゃ、最後は僕がコイツの息の根を止めてやるから」
そう言って、ベッドの上のシドを視線で指す。
強力すぎる監視。
頼もしすぎる仲間が、この場に加わった。
そうして。
多夜とアオイ。
私と千景。
そして、シド。
奇妙な共同生活が始まる。


