余所者-よそもの-【 3 】



マンションに着くと。

多夜とアオイが揃って出迎えた。


狭い玄関。

電気も点けないまま。

暗い空間に更に影を落とすようなユキに、二人は口を開けない。


カナコの手を引き、彼女が自分で靴を脱いだのを見届けたあと。

ユキは静かに口を開く。


「約束しろ」


多夜とアオイは息を飲んだ。

ユキは一言一言を二人の頭に叩き込む。


「コイツを傷つけるな」
「かすり傷一つ、許さない」
「外傷だけじゃない。コイツの心も傷つけるな」
「帰ると言ったら、その場で帰せ」
「ここには監視を置く。拒否権はない」
「怪しい動きをすれば、連れて帰る」


そこまで言うと、ユキは多夜の胸倉を掴み上げ、壁に押し付けた。

二人の視線がぶつかる。


「………」

「………」


多夜の鋭い目。

それをへし折るかのような、深く、冷酷なユキの瞳。


「いいか。間違えるなよ」

「………」

「セーフラインはお前たちの判断じゃない。俺の判断だ」


ユキは多夜から手を離した。

そのまま玄関の戸を開き、くぐる。


ユキがカナコを振り返ることはなかった。


「………」


扉が、静かに閉じる。

カナコはしばらく、その扉を見つめた。


やがて胸の前をぎゅっと掴むと、扉に背を向け、奥へと歩く。


そうして。
ベッドに横たわる紫藤の前に、静かに立った。