「……ユキさん?」 上向いたカナコが、持ち上げられた前髪に気が付いた。 「恥ずかしいです」 やめて、と。 ユキの指先へ、手を伸ばす。 「傷は、消えない」 触れる寸前、その手をそっと捕まえた。 「深ければ、深いほど」 「………」 「俺は、お前が傷つくのが嫌だ」 カナコは真っ直ぐなユキの瞳から、目を逸らした。 少し考えるようにわずかに俯いたあと。 「だけど……この傷のおかげで、ユキさんに会えた」 掴まれていたユキの手を、自分からぎゅっと握り返した。