「他の男のところにいるお前を、ずっと好きなままでいろって?」
ユキはその細い背中に手を回し、強く抱きしめ返す。
愛しい彼女の吐息が、耳に触れた。
「お前は、ひどいね」
「……嫌いに、なりますか」
「だったら行くなよ」
嫌いになれるなら、とっくの昔にそうしてる。
「………」
ユキはカナコの長い髪を、上から下へと撫でた。
そのまま耳に触れ。
胸の前にあるカナコの額に手を滑らせる。
前髪をそっと持ち上げ、額の真ん中の傷痕を露わにした。
──『傷、残るんだってね』
──『隠れるところでよかったです』
この病院で縫合した、傷。
出会う前、男に負わされたもの。
馬鹿な女だと思った。
男に対する恨みつらみはまるでなく。
まして隠れるならいいと笑って受け流す。


