ユキがカナコに初めてぶつけた感情は、怒りだった。
──『なんでだろう』
──『俺、お前が自分を蔑ろにするのを見る度に、イラつくんだよね』
──『俺をここまでイラつかせるのはお前くらいだよ』
いつまで経っても、自分を優先してくれない。
お前が大切だと、傷ついてほしくないと。
何度伝えても、また自分より他人を選ぶ。
「どうして、放っておくことができない?」
簡単なことだろ。
人間には、できることに限界がある。
自分の手に負えないものまで、背負う必要なんてない。
事故だった。
運が悪かった。
そうやって、人は器用に生きていく。
「このまま……みんなのところに帰っても。私、いつか後悔すると思うから」
「どうでもいいって思えばいい」
「………」
「運が悪かった、そう思えばいいだろ」
「……できません」
自分を大切にすること。
自分を守ること。
自分を愛すること。
どうしてお前は。
たったそれだけのことが、できない。


