面会時間が過ぎ。
サンコンと別れ、ユキとカナコは病院を出た。
駐車場に停めていたユキの車。
ピ、とロックを解除して、乗り込んだ。
ユキは運転席に座り。
カナコは助手席に静かに腰かける。
ユキは後ろ手でシートベルトを引きながら、
「帰るか」
そう、何気なく口にした。
二人にとって特別な、その一言。
「ユキさん」
カナコの声が、車内にぽつりと落ちた。
「………」
ユキはゆっくりと振り向いた。
しゅるり、と。
手放されたシートベルトが、定位置まで巻き戻る音が鳴り響いた。
「いやだよ」
「………」
「街を獲った」
「………」
「お前が帰れない理由はない」
そう。
全部潰した。
カナコが帰りたい場所に、帰れない理由を。
「かぁこ」
お前とずっと一緒にいたいから。


