それからいくつか言葉を交わしたあと、潤と千景は浮かない顔のまま病院を出た。
抗争の後始末をするために。
千景は離れる際、ユキに向かってこう言った。
『ママを説得しろ』
薬抜きは地獄だ。
本人はもちろんのこと、傍で支える人間にとっても。
絶対に、行かせるな。
絶対に、手放すな。
……と。
千景は、タカというカナコの昔の男のことを知らない。
それでもカナコの目と表情を見て、かける言葉を失くしていた。
他人のことなんて放っておけ。
まして、自分を酷く傷つけた人間のことなんて。
……こんなの、とてもカナコに伝わる気がしない。
きっと、だから千景だってユキに託したんだろう。
カナコを説得する方法。
自分を差し置いてまで、他人を思いやることをやめさせる方法。
「……俺にだってわからない」
ユキの嘆きは、誰に聞こえることもなく。
浮かんで、消えた。


