「だって、全部覚えてるんです。……忘れられない」
紫藤は、タカへの罪悪感を捨てないカナコを怒った。
──『男を見放さない。その選択の一つ一つが、男の首を締めた』
それでもカナコは。
あの日、紫藤にこう告げた。
──『だったら、私は。その罪と一緒に生きていく』
全部、忘れられない。
タカのことも、紫藤のことも。
──『後悔するか?あの日、俺に拾われたこと』
なにせ、カナコにとっては。
「……ユキさん」
目の前にいるユキも、千景も。
この街のかけがえのない出会いの全てが、紫藤から始まった。
──『お前、余所者か?』
あの日、手を差し伸べられなければ。
カナコにとっての、今日はない。
これは、不平等に訪れた出会い。
けれど、カナコには。
──『貧乏くじ』とは、到底思えなかった。


