余所者-よそもの-【 3 】



カナコの目は、再び紫藤に縫い付けられる。

記憶の中の紫藤の言葉が、表情が。


──『だから言ったろ。全部捨てろと』


どんどん鮮明になって、蘇っていく。


「かぁこ」


すると突然、視界は遮られ。

カナコの瞳にユキが映りこんだ。


まるで懺悔。

頭を下げる前の土下座のような格好で、床にへたり込むカナコの前。

ユキは目を合わせるように屈み、こちらへ意識を引き戻すように両肩へ手を置いた。


「何、考えてる」


カナコを何度も助けた手。

温かい手が、カナコを包んだ。


「忘れたのか。コイツがお前に何をしたか」


カナコは困ったように眉を下げた。


「……忘れてません」

「俺も。忘れられない」


──忘れられない、痛み。

それから。

何度も優しく差し伸べられた、この、優しい手──……


「全部……覚えてます」

「だったら……!」


ユキは唇を噛んだ。

俯いて、喉を詰まらせる。


「……だったらっ!どうしてそうなる!!」


肩を掴むユキの指先に、力がこもる。

苦しそうに歪んだ顔を、カナコはじっと見つめた。