「起きろよ、怜」
揺すっても、紫藤は反応を示さない。
「カナコだ。連れてきた」
多夜はカナコの手首を握りなおし、紫藤の頬に無理やり触れさせた。
強張ったままのカナコの手が、紫藤の頬を擦り、歪める。
「ほら、生きてる」
「………」
「お前は、殺してない」
カナコの手の甲に、多夜の涙が零れた。
紫藤は何も言わない。
指先一つ、動かない。
涙で顔をぐしゃぐしゃにした多夜が、カナコに振り向いた。
「怜に、声をかけろ」
「………」
「怜に、触れろ」
「………」
「怜を、治せ」
カナコは呼吸を荒げた。
声にならないまま、ただ「はあ……、はあ……」と浅い息を繰り返す。


