多夜は静かに首を横に振る。 「……違う」 「何が?」 「生きるためだ」 「………」 「俺は……怜を、治すために」 コイツ、何言ってんだ? 千景は眉をひそめた。 「カエデが死んだ」 「………」 「怜が、壊れた」 周囲の誰もが沈黙する。 多夜は気にも留めない様子で、話し続ける。 「眠らない。食わない。だから、”渡した”」 「………」 「怜はカエデのことを忘れて、楽になった」 「………」 「俺は怜を、治した」 ……意味がわからない。 この場にいる全員が、同じように顔を歪めた。