「……ドラッグだろ」
静かな部屋に、千景の声がぽつりと浮かんだ。
ベッドに目を向けたまま、誰に言うでもなく続けた。
「少なくとも……僕がZ地区に戻ったときからだ。コイツはもう、狂ってた」
──『僕にはわかる。相手の目を見ればわかる』
──『アイツ、狂ってる』
「目が、コッチ側だった」
Z地区で、嫌というほど見てきた目。
「それも……かなり深い」
──『帰せない』
──『紫藤にだけは、ママを渡せない』
あのとき。
千景がカナコを攫い、アパートに閉じ込めたのは。
ドラッグに狂った紫藤から、遠ざけるためだった。
それでも、まさか。
……ここまで堕ちるとは。


