千景は目にも留まらぬ速さで走り、ドアノブを掴む。
捻って、開けば。
「……いた」
室内の廊下。
開きっぱなしの扉の先。
多夜と、カナコの背中が視界に映る。
「ママ!」
そう呼びかけたとき。
カナコの身体が、ゆっくりと、膝から崩れ落ちた。
「………」
なんだ。
どうした?
駆け寄る千景。
何度呼んでも、カナコはこちらを振り向かない。
千景は廊下を走り抜ける。
リビングがあった。
右手に、八畳ほどの部屋が広がっている。
カナコは部屋に入ることもせず、リビングと部屋の仕切りの前でへたり込んでいた。
彼女の視線の先には、一台のベッド。
ベッドの上に、誰かが横たわっている。
千景はカナコと同じ位置まで足を進めると、ぴたりと止まった。
「………」
その光景を目に映したまま。
ただ、カナコの隣で身動きを取らず、目を押し開いた。


