ひゅ、と音を立てた潤の右ストレートが、野間の左頬にめり込む。
吹っ飛んだ野間は、店内のテーブルやソファーを巻き込みながら派手に倒れた。
「いてて……」
「お前、幹部にしては弱くね?」
潤は殴った手をぷらぷらと振ってほぐしながら野間に近づく。
「病み上がりなモンで」
「悪いな、手加減してやれなくて」
「まぁ、慣れっこっすよ。それに元々僕は肉体派じゃないですし」
ニヤリと口端を釣り上げた野間。
潤は相手の狙いをすぐさま理解した。
「カナコちゃん、俺からもうちょい離れろ」
顔面にいくつか傷をつくった潤が、カナコの肩をそっと押し、後ろへ下がらせた。
「どうもやり辛い。アンタとは相性が悪いなぁ」
野間の目的は、この喧嘩に勝つことじゃない。
コイツはずっと隙を窺っている。
「お前の思うようにはやらせねぇよ?」
殴られ、熱を持ちだした左頬の腫れを確かめるように触れる。
潤は野間が体勢を整えている間に、素早く隣に視線を動かした。
――ドォン……!!
こちらとは比べ物にならないほど、けたたましく鈍い衝撃音。
潤のすぐ隣では、サンコンと多夜が激しくぶつかっている。
サンコンが押されている様子はない。
「ダァァァラァアア……!!」
むしろ、サンコンが押している。
いける。
潤はそう思った。


