野間の出現に、イヤホンから流れる通話はいろんな声が飛び交っていた。
しかしユキが話しだすと他は黙り、彼の声だけが絶えず千景に届き続けていた。
『答えろ!どうなってる!』
「野間と多夜が中に入った」
『……すぐ、戻る』
「いや、戻ってくんな」
千景の声に、ユキが押し黙る。
「お前が戻ってくる頃には、こっちは終わってる」
『なぜそう言い切れる』
「アッチはどう考えても捨て身だ。ここの人数は大したことない。十分以内に片がつく」
『………』
「中に入ったのはたった二人。そこには潤とサンコンがいる」
『万が一、かぁこを連れ出されたら?』
「出さない。……絶対に、逃がさない」
千景のカナコへの執念を、ユキはうざったいほどに知っている。
だからこそ、千景を最終防衛線に置いた。
それに。
ユキにとっても、千景にとっても。
「これは最悪の事態なんかじゃない。想定の範囲内の話だ。策だって立ててたろ」
『野間は想定外だ』
「一番の想定外で言えば、紫藤がいないことだ」
『それはそうだ。でも』
「冷静になって考えろ。今のこの状況自体が、こっち戦力をAnBarに集めるための陽動かもしれない」
『………』
「お前はそのままRe:bidoに行け」


