野間は敵。
だったらやることは一つ。
「お前一人で何ができる」
「そうなんすよね。驚きました。まさかこんなにシトウが押されるだなんて」
「………」
「こりゃもう、勝てないっすよね」
「おい、野間」
「……ああ。質問は『僕一人で何ができるか』でしたっけ」
千景は苛立った。
悠長に会話を楽しむ様子の野間に、今にも手が出そうだった。
するとそこで、やっと気が付く。
野間から目を離さない千景の耳に、背後から微かなうめき声が届いた。
「………」
振り返れば、AnBarの扉の前。
いつの間にか仲間が地面に転がっている。
「一応……僕一人じゃないんすよ」
――ガチャン、と壊された、AnBarの内鍵。
迫り寄るZ地区の人間を、鉈(ナタ)のように振り下ろした踵(カカト)で仕留める、その男。
「多夜さん。お先にどうぞ」
野間のその一言に、多夜がAnBarの扉を潜った。


