流れ込んだ人の多さ。
空いた場所を埋めるため、人が次々と動いていく。
それは波のように、一定の速度で。
一定の方向へ。
「………」
――その流れを。
先ほどからずっと、視ている男がいた。
「強い。とても勝てそうにないなぁ」
人垣の中心を路地の隅から眺めて、ぽつりと嘆く。
「……ま。いいんすけど」
――ブオンッ!!
一気に吹かしたエンジン。
混乱の中に生まれた隙間を縫うようにして、一台のバイクが駆け抜ける。
猛スピードのバイクが、AnBarに続く細道へ滑り込んだ。
リンコは目の前の幹部に阻まれ、駆け抜けたバイクに気付かない。
しかし、異変を察知した仲間がすぐさま通話で知らせを送る。
『一台のバイクが、地下の売人の方へ向かいました……!!』
「うん。もう見えてるよ」
待ち構える、千景。
車体を横に滑らせるように急制動をかけたバイク。
――ズザザザザ、とタイヤがアスファルトを激しく引っ掻く音を立てながら、白煙を上げる。
ゴムの焦げた匂いを立てたバイクが、千景の前に停車した。


