――AnBarの中では。
「退屈です……」
「退屈なのがいいことなんだよ」
サンコンが暇を持て余していた。
「前回もそうでしたが、どうして私は前線ではないのですか?」
「お前なぁ。それ何ッべん説明させる?」
「ユキと交代がよかったです」
自分の役割が不服だと口を尖らせるサンコンに、潤は呆れる。
イヤホンから聞こえる騒動に血が騒いでいるようだ。
「……潤さん」
潤はカナコに視線を移した。
ソファに掛けた彼女は、祈るように手を合わせながら不安げな表情を浮かべている。
「みんなは無事ですか?」
「全然無事だよ」
「よかった……」
ホッと胸をなでおろしたカナコ。
サンコンと潤にも、イヤホン越しに戦況は逐一伝わっている。
この場で戦況がわからないのは、カナコだけ。
カナコは通話に参加していない。
理由は明白で、戦闘員ではないから。
潤は抗争前のユキとカナコのひと悶着を思い出して、密かに笑った。
――『ユキさん。私もグループ通話参加したいです』
――『ダメ。お前が通話を聞いてどうする』
――『……私だけ仲間外れ』
潤は思う。
サンコン程ではないが、カナコだって自分の置かれた役割の重要性を理解していない。
ただここにいて、俺たちに守られていることが一番大事なのに。
なぜ、ユキが。
ここにサンコンと俺を残したのか。
更に、千景までも表に配置し、戦力の要をここに固めたか。
「……。カナコちゃん、なんか飲もうぜ」
「私は大丈夫です」
「そう言わず。ウーロン茶でいい?」
「でも、みんなが闘ってるのに。私だけ……」
「いいんだよ。それが一番」
静かなAnBar。
潤はお茶を三つ用意して、テーブルに置いた。
ソワソワと落ち着かないカナコの向かいに腰掛け、いつも通りたわいもない会話を始めたのだった。


