「リンコ」
『こっちも問題ないわ。アンタは前だけ見てなさい』
余裕のある声がイヤホン越しに響いた。
――リンコ・バン+龍翔鳳鱗から成る、中間部隊。
彼らは、ユキ達前線部隊とAnBarまでを繋ぐ位置を広く陣取っていた。
ユキ達がシトウ深部へ進めば進むほど、その背後を埋める。
シトウがAnBarを目指せば、即座に守りへ転じる。
前線とAnBarを繋ぐ、攻守の要。
『臨機応変にやるわ。動くときは一声頂戴』
「ああ」
『チカちゃん』
自分の役割を十二分に理解しているリンコが、声を千景に渡す。
『ママは無事』
即座に答えた千景に、ユキが返す。
「……まだ何も聞いてない」
『それしかないだろ』
千景は車一台通るのがやっとのAnBar前の細道を陣取っていた。
そこにはデックの部隊と切り離した、Z地区の一部の人間を残している。
『まだ敵一人流れ込んできてないよ。ひとまず奇襲は大成功だね』
その言葉を最後に、各持ち場それぞれが闘いに集中した。
AnBar前はとても静かだ。
シトウからここまで。
何十にも防衛線を張った先にある、この場所。
「とっとと出て来い。……紫藤」
AnBarを背に、千景は静かな細道の先を見据える。
イヤホン越しには、遠く離れた抗争の音が響き続けていた。


