紫藤さんは時折、多夜に命令するようになった。
『アイツら片付けて来い』
街に現れた不穏分子の掃除。
『あの喧嘩を収めて来い』
シトウの人間同士のいざこざの鎮圧。
やがて。
紫藤さんの横には、当たり前のように多夜が付き従うようになり。
そうして俺たちにとっても多少扱いやすくなった頃、多夜は幹部にまで成りあがった。
俺が多夜の幹部入りに反対したのは。
いくら多夜が変わろうとも、紫藤さん以外が多夜を扱うことは出来ないと思ったからだ。
多夜が動くのは、いつだって紫藤さんが絡んだとき。
そう。
それ以外の何かに、コイツが執着する姿なんて見たことがない。
だったら。
「………」
今、狂ったように探しているあの女も。
やっぱり紫藤さんが絡んでるってことか?
「じゃあ、紫藤さんの所在を言わないのは……なんでだ、多夜」
思わず独り言が洩れた。


