余所者-よそもの-【 3 】



しかし、紫藤さんは。

抵抗する力のなくなった多夜に馬乗りになると煙草に火を点け、会話の続きを始めた。


「お前。目の前にあるもん全部、バケモンに見えてんだろ」

「………」

「全部うぜぇんだろ?だから壊してぇし、殺してぇ」

「………」


「お前だって、ただ生きてぇだけのバケモンだ」


そこで初めて、多夜の顔に表情がのっかる。


「生きたい……?」

それはどこか悔しそうで、なぜか嬉しそうな。

どっちともとれるような、気持ち悪い顔つきだった。


「その持て余した衝動。俺に寄こせ」

「………」

「何回狂おうが、俺が全部叩き潰してやる」


このやり取り自体にどんな意味があったのか。

俺にはわからない。


ただ……この日を境に。

多夜が紫藤さんの前に現れる目的が、明確に変わったようだった。


もう、むやみやたらに殴ろうとしない。

それは紫藤さんに対しても、俺たち街の人間に対しても。


簡単に言えば、多夜は大人しくなった。


まるで紫藤さんに飼い慣らされた、犬。

ただ黙って、紫藤さんのそばをついて回った。