「………」
俺の怒声にも表情を変えない目の前の男。
嚙みしめた奥歯を軋ませ、俺は恐ろしい疑いをとうとう口から零した。
「まさか紫藤さん、死んだんじゃ――………」
すると、脇腹に衝撃が走る。
「……グッあ……ッ」
ゲホゲホと、音のおかしな咳が出る。
多夜の蹴りを横腹に食らった。
「なめんじゃねぇ!!」
俺は多夜に飛びかかった。
チェアをなぎ倒しながら、拳を振りかぶる。
目の前の冷淡な顔を、俺の拳で思いっきり歪めてやった。
頬は歪んでも、コイツの表情は崩れない。
それが気色悪くて、気色悪くて、仕方がない。
覆いかぶさりながら、顔面を何発か殴りつけたところで。
いつの間にか胴体の隙間に滑り込んでいた多夜の足が、俺の顎先を真下からつき上げてきた。
後方に吹っ飛ぶ身体。
ゆっくり立ち上がった多夜が、冷めきった瞳で俺を見下ろす。
「怜は」
「………」
「死なない」
「だったらッ……!!」
だったらどこにいるのか、吐け。
しかし、多夜の意志は変わらない。
「女を、回収しろ」
……ふざけるな。
俺は血の混じった唾を吐き捨てた。
この期に及んで、まだ女だと?
馬鹿じゃないのか。
呆れて物も言えない。
俺は立ち上がり、出口の戸に手をかけた。
「もう付き合いきれない。俺の部下は動かさない」
最後にそう伝え、Re:bidoを後にした。


