俺は一向に口を開かない多夜に向かって、舌打ちを響かせた。
もうこの際、野間はいい。
女よりも、野間よりも。
シトウが一番に探すべき人間は他にいる。
「じゃあ。――紫藤さんはどこだ」
その名前に、多夜がピクリと反応を示す。
「いい加減にしろよ、多夜」
俺は拳を丸める。
もう我慢の限界だ。
野間がいない。
そのせいで街の情報が入ってこない。
紫藤さんもいない。
その行先を知っているであろう多夜は、何も喋らない。
瞬く間に街に広がる、疑心暗鬼。
これまで恐怖と力で抑え付けていた血の気の多い輩たちの中には、タガが外れたように好き勝手に暴れだしているヤツだっている。
これを好機と見たのか。
Z地区や露天街の動きだって、きな臭い。
すでに収拾のつかない事態。
「このままじゃ、街が終わるぞ」
「………」
「野間が消えたことと、紫藤さんの不在。何か関係があるのか?」
「………」
「……なぁ、おい!!」
ぼうっと俺の声を聞き流し続ける多夜の胸倉を掴み上げた。


