ここは希望の光が届かない場所。

もう何年ここにいるのだろう。

そして、あと何年ここにいればいいのだろう。

今となっては、何故ここにいるのかさえ忘れてしまった。


ここには『巡廻者』と呼ばれる人物が存在するという。

私と同様に、ここにいる理由を忘れてしまった男から聞いた話だ。

巡廻者がどんな人物かは知らないが、我々をこの場所から救ってくれる存在らしい。

私は見た事がないし、その人物を見たという人間とは一度も会った事がない。

どうせ「救われたい」と願う心が生み出した偶像だろう。陳腐な妄想だ。

そんな戯言に振り回される程、私は幼稚ではない。

ただ私は待ち続ける、この場所から解放される事を、、、



「おい!起きろ!!」



私を、夢の世界から現実の世界へ強引に連れ戻した男が、目の前に立っていた。

その男は力ずくで私を鎖で繋ぎ、頭から布の袋を被せ、視界を奪った。

どこか生臭い部屋に連れて行かれ、四つん這いにさせられた。



『これより、H234番の刑を執行する』



どこからかマイクのような音声が聞こえた。

その声の直後、頭に鈍い音が響き、首より下の知覚が消失した、、



ついに私は、この場所から解放された。


この時を、、ずっと待ち望んでいたのだ。