ドアの隙間から覗くと、若が腕を組んでベッドを見下ろしていた。ベッドの上では、ナイトガウン姿の玲美が若の威圧感に怯え、震える腕で無理やり上体を起こそうとしている。
「寝てろ。誰が起き上がれと言った」
若の声は相変わらず氷のように冷たかったが、その手は思いのほか乱暴ではなく、玲美の肩を軽く押して再びベッドに寝かせた。そして、彼女の頭の下に敷かれていたぬるい氷枕を無造作にひったくる。
「……お前は本当に手のかかるガキだな。たかが数日徹夜したくらいでぶっ倒れやがって」
口から出るのは容赦のない悪態。だが、若の視線はすぐにドアの前に立つ俺へと鋭く飛んできた。
「おい晴樹。氷替えろ。大樹、お前は下のコンビニに行ってゼリーかポカリをありったけ買ってこい。……晴樹、お前はそれ食わせて、こいつの熱が下がるまで絶対に側を離れるな。いいな?」
「は、はいッ!」
俺が直立不動で返事をすると、大樹の兄貴も「了解しました」と短く応じ、さっさと部屋を出て行った。
(……なんだかんだ言って、マジで甘々じゃねぇか)
この血と暴力に塗れた狂った世界で、若は玲美のことだけは異常なほど気にかけている。あの100万円超えのトンチキな差し入れも、この不器用すぎる看病の命令も、すべては不器用な『死神』なりの愛情表現なのだ。
……玲美本人は全くと言っていいほど気づいていないみたいだが。
俺は毒気を抜かれながら、若から受け取った生温かい氷枕を持ち、急いでキッチンへと走った。
「寝てろ。誰が起き上がれと言った」
若の声は相変わらず氷のように冷たかったが、その手は思いのほか乱暴ではなく、玲美の肩を軽く押して再びベッドに寝かせた。そして、彼女の頭の下に敷かれていたぬるい氷枕を無造作にひったくる。
「……お前は本当に手のかかるガキだな。たかが数日徹夜したくらいでぶっ倒れやがって」
口から出るのは容赦のない悪態。だが、若の視線はすぐにドアの前に立つ俺へと鋭く飛んできた。
「おい晴樹。氷替えろ。大樹、お前は下のコンビニに行ってゼリーかポカリをありったけ買ってこい。……晴樹、お前はそれ食わせて、こいつの熱が下がるまで絶対に側を離れるな。いいな?」
「は、はいッ!」
俺が直立不動で返事をすると、大樹の兄貴も「了解しました」と短く応じ、さっさと部屋を出て行った。
(……なんだかんだ言って、マジで甘々じゃねぇか)
この血と暴力に塗れた狂った世界で、若は玲美のことだけは異常なほど気にかけている。あの100万円超えのトンチキな差し入れも、この不器用すぎる看病の命令も、すべては不器用な『死神』なりの愛情表現なのだ。
……玲美本人は全くと言っていいほど気づいていないみたいだが。
俺は毒気を抜かれながら、若から受け取った生温かい氷枕を持ち、急いでキッチンへと走った。

