檻の外へー極道なんて、大嫌いー

【side 晴樹】

待ちに待った夏休み。
普通の高校生なら海だの祭りだのと浮かれる季節だが、極道の家に飼われている俺たちにとって、そんなもんは名ばかりの休日でしかなかった。むしろ学校という「強制的な休み時間」がなくなったことで、組から課される仕事は容赦なく増えやがった。
日中はいつものように飛龍の倉庫に入り浸り、剛田たちとバカ騒ぎをして過ごす。そして夕方から翌日の朝方にかけては、小鳥遊の暴力装置として情報収集や裏街の掃除、半グレの処理を終わらせる。
マンションに帰って重力に身を委ねるように眠れる時間は、せいぜい二時間から四時間程度。そんなイカれた二重生活が、夏休みに入ってから毎日続いていた。
俺は男だし、ガキの頃から大樹の兄貴に死ぬほどしごかれてきたから、体力には自信がある。それに、あんなに居心地の良い飛龍の倉庫に行かないと言う選択肢はなかった。
だが、玲美は違う。
あんな細くて華奢な体で、極道の狂気と飛龍の陽だまりを行き来する二重生活のプレッシャーに、いつまでも耐えられるわけがなかった。