檻の外へー極道なんて、大嫌いー

「……今のガキどもは、なんだ」
地を這うような、低い声。
「うちの掃除の現場を見た目撃者か? 大樹、念のためにあのガキどもを連れて来い。どこまで見たか口を割らせて、場合によっちゃ……」
「ま、待って!!」
大樹が動こうとした瞬間、私は恐怖で震える足に鞭を打ち、咄嗟に二人の前に立ち塞がった。
「……あ、あれは、ただの巻き込まれたカタギの高校生です! 半グレに絡まれてたところを、私たちが介入して助けただけで……っ、暗かったし、顔も現場も何も見られてません! だから、私が逃がしました!」
心臓が肋骨を突き破りそうなほど激しく打鐘している。
もしここで樹たちが捕まれば、少し痛めつけられるだけでは済まない。最悪の場合、小鳥遊組の秘密を守るために東京湾に沈められる。それだけは絶対に阻止しなければならない。
晴樹も慌てて私の横に並び立ち、必死にフォローを入れる。
「そ、そうです! 全くの無関係な一般人ッス! 俺たちが『見なかったことにしろ』って脅して追い返したんで、絶対に問題ないです!!」
私たちの異常なまでの必死さに、大樹が咥えていた煙草の煙をふぅと吐き出し、怪訝そうに眉を寄せた。
「……お前ら、ずいぶんと必死だな。たかが目撃者一人ふん縛るのに、何をそんなにムキになってる」
「っ……!」
大樹の鋭い指摘に、晴樹の額から冷や汗がツーッと流れ落ちるのが見えた。
そして、魁がゆっくりと私を見下ろした。
その漆黒の瞳は、私のウィッグとマスクの奥にある動揺を、まるでレントゲン写真のように正確に透かして見ているようだった。
「……お前、随分とカタギに甘くなったな、玲美」
低い声が、夜の冷たい空気を震わせた。
その言葉に込められた疑念と殺気に、私は呼吸の仕方すら忘れてしまいそうだった。
「……っ、ちが、違うの。無駄な騒ぎを起こして、サツに目をつけられたくなかっただけで……」
「ほう。お前が俺の仕事のやり方に口出しするのか」
魁が一歩、私との距離を詰める。
その圧倒的な死神のプレッシャーに、私はついに耐えきれず、半歩後ろに下がってしまった。
(バレる……! 私たちの居場所が、壊される……!)