檻の外へー極道なんて、大嫌いー

熱いお湯が、全身にできた打撲や擦り傷に染みてチクチクと痛んだ。けれど、銃で撃たれたわけでも、ナイフで刺されたわけでもない。極道の狂った基準で言えば、これくらいの怪我は「無傷」に等しい。昨日から軋んでいた肋骨も、なんとか再骨折には至らず、ヒビが入った程度で済んだと思う。
急いで髪をドライヤーで乾かし、アイロンの掛かった清潔な高校の制服に腕を通す。
鏡の前に立つと、そこには昨夜、御影組傘下の組長の足を銃で撃ち抜いた人間とは思えない、ただの平凡な女子高生が映っていた。
「……行くか」
晴樹が、乱れたネクタイを締め直しながらリビングに出てくる。お互い、顔色は青白く、目の下にはうっすらと隈ができていた。
「うん……」
私たちはマンションの地下駐車場に降り、晴樹のバイクに跨った。
私が後ろに乗り、彼の背中にしがみつくようにして額を押し付ける。エンジン音が鳴り響き、朝の冷たい風が頬を叩いた。
風に吹かれながら、私の脳裏にはまだ、魁の怒鳴り声と、あの底知れない殺気が焼き付いていた。『泥水をすすってでも生き延びろ』――その言葉が、エンジンの振動と共に身体の奥底にガンガンと響いているような気がした。