パンッ、パンッ!と、狭い空間に鼓膜を劈くような乾いた発砲音が連続して響き渡った。
硝煙の匂いが鼻を突く中、私は押し寄せる上級組員たちに向けてリボルバーの引き金を引く。
だが、私は絶対に相手の急所を狙わなかった。
肩、太もも、銃を握る手首――。命を奪うことのない部位だけを正確に撃ち抜き、戦闘能力だけを確実に奪っていく。血飛沫は舞うが、誰も死なない。極道の抗争においては甘すぎると笑われる行為だが、私の心に残された最後の「人間としての防波堤」が、どうしても殺人を拒絶していたのだ。
「晴樹! 一階の残りはお願い!」
弾を躱し、怯んだ男の顎を蹴り上げながら、私は背後の晴樹に向かって叫んだ。
標的である組長や若頭は、こんな下っ端の群れの中にはいない。彼らがいるとすれば、この建物の最上階である三階の奥だ。
「おう! 気をつけて行けよ、麗美!」
血生臭い笑みを浮かべて鉄パイプを振り回す晴樹に一階の制圧を任せ、私は非常階段へと飛び込んだ。
三段飛ばしで薄暗い階段を駆け上がる。
二階、そして最上階へ辿り着いた頃には、私の呼吸は浅く乱れ、かろうじてくっついていたはずの肋骨がギリギリと軋むような悲鳴を上げていた。
息を吸い込むたびに、肺に鋭いガラスの破片が突き刺さったかのような激痛が走る。防弾チョッキの重さが、鉛のように疲労した体にのしかかってきた。
「……っ、はぁ、はぁ……」
痛みを堪えながら、私は三階の最奥にある一番大きな両開きの扉――組長室の前へと辿り着いた。

