檻の外へー極道なんて、大嫌いー


いくら急所を突くとはいえ、大柄な成人男性を素手で沈めていくのは骨が折れる。
私に殺到する敵を全力で捌き、私の死角を晴樹が容赦なく叩き潰す。その連携で、一階にいた約五十人もの下っ端を文字通り「全滅」させた頃には、私の息はすでに荒く乱れていた。
かろうじてくっついたはずの肋骨の古傷が、激しい運動で微かに疼き始めている。


――ドタドタドタッ!!
その時、三階の方向から、階段を乱暴に駆け下りてくる複数の足音が響いた。
一階の騒ぎに気づいた上級組員たちが、慌てて降りてきたのだ。彼らの手には、先ほどの下っ端たちとは違い、鈍く光るナイフや鉄パイプ、そして――黒光りする拳銃が握られていた。
「……っ、まだ幹部は出てこないの……」
私は額に滲んだ汗を手の甲で拭いながら、深いため息をついた。
五十人を素手で倒した疲労が、水銀のように重く手足纏わりついている。それでも、立ち止まることは許されない。ここで少しでも気を抜けば、蜂の巣にされるのは私たちだ。
私は太もものレッグホルスターから、冷たいリボルバーを引き抜いた。
「晴樹、ここからは拳銃も使うよ」
疲労の溜まる体に鞭を打ち、私は銃口を階段から飛び出してきた男たちへと真っ直ぐに向けた。引き金に添えた指に、静かに力を込める。

もう、素手での準備運動は終わりだ。

血生臭い、本当の殺し合いが始まる。