檻の外へー極道なんて、大嫌いー


「玲美、準備するぞ。今回はナイフもハジキも何でもありだ。油断したらこっちが死ぬ」
晴樹の声で現実に引き戻される。
私たちはリビングのテーブルに、黒いボストンバッグを広げた。中から鈍い金属光沢を放つ凶器たちが姿を現す。
私は無言でリボルバーを手に取った。
ずしりと重い冷たい鉄の感触が、手のひらから全身の体温を奪っていくようだった。シリンダーを振り出し、38口径弾を一つずつ、弾込めしていく。チャキ、チャキという乾いた金属音が、部屋に虚しく響く。
弾を込め終えた銃を、太ももの横に巻き付けたレッグホルスターにしっかりと固定した。歩くたびに太ももに当たる銃の重みが、「お前は人殺しの道具だ」と囁いているようで酷く不快だった。
「ほら、これも着ろ」
晴樹から手渡されたのは、ずっしりと重い防弾チョッキ。
万が一の銃撃戦に備えたものだ。黒いパーカーの下にその重いチョッキを着込むと、胸の奥が圧迫されて、ますます息がしづらくなった。
つい一時間前まで、倉庫で数学のノートと睨めっこしていたはずなのに。
今の私は、防弾チョッキを着込み、太ももに実弾入りの拳銃を隠し持った、ただの『小鳥遊の暴力装置』だ。
「……行くよ、晴樹」
私は感情を押し殺し、冷たく凍りつかせた声でそう呟くと、夜の街へと続くマンションの扉を開けた。