檻の外へー極道なんて、大嫌いー

「お、おい総長? どうしたんスか、顔真っ赤ッスよ? 腹でも痛ぇの?」
隣で笑っていた佐伯が、俺の異変に気づいて不思議そうに覗き込んでくる。
「っ、う、うるせぇ! な、なんでもねぇよ! 暑いんだよ今日は!」
俺は慌てて顔を背け、無駄に大声を出して誤魔化した。
心臓のバクバクが止まらねぇ。ヤバい。あの笑顔が、網膜に焼き付いて離れねぇ。俺は今、人生で初めて「雷に打たれる」ってやつの意味を理解してしまった。
だが、俺のそんな致命的な動揺を、絶対に見逃さない男が一人いた。
「……オイ。総長」
今まで俺たちと一緒に馬鹿笑いしていた晴樹の声が、急に地を這うような低いトーンに変わった。
見ると、晴樹は俺と姫の間にスッと割り込むように立ち、猛禽類のような鋭い目で俺を睨みつけている。その目には、明確な『警戒』と『独占欲』がギラギラと渦巻いていた。
「お前、今、うちの玲美をどういう目で見てた……?」
「あぁ!? 別に変な目じゃ見てねぇよ! つーか『うちの』ってなんだよ、姫は飛龍全員のモンだろうが!」
図星を突かれた俺は、無駄に声を荒らげて言い返してしまった。
晴樹の野郎、自分が酷い弁当を作ってきた張本人なのに、俺が姫に惚れたと直感した途端に番犬モードに入りやがった。
「あんたたち、うるさい。……静かにご飯食べさせて」
当の姫本人は、俺と晴樹の間でバチバチと火花が散り始めたことなど全く気づかず、今度はあの岩石みたいなハンバーグと格闘し始めている。
その横顔を見つめながら、俺は確信した。
絶対無理だとは分かってる。こいつには晴樹っていう底知れない用心棒がべったり張り付いてるし、住む世界が違うくらい綺麗すぎる。
だけど――俺はもう、この感情にブレーキをかけられそうにない。