檻の外へー極道なんて、大嫌いー

ピンポーン。
ふいに、静かな部屋に無機質なインターフォンのチャイムが響き渡った。
私と晴樹の動きが、同時にピタリと止まる。
……珍しい。
このマンションは組が管理するセキュリティの厳しい物件で、最上階のこの部屋にアポなしで訪ねてくる人間なんて、そうそういない。怪訝に思いながら、私は壁に備え付けられたモニターの前に立ち、画面のボタンを押した。
「え……」
画面に映っていたのは、完璧に仕立てられた漆黒のスーツに身を包んだ長身の男と、その斜め後ろに控える少し疲れた顔の男。
――小鳥遊魁と、東條大樹(たいき)だった。
サーッと、全身の血の気が引いていくのが分かった。
ついさっきまで感じていた微かな平穏も、体の暖かさも、一瞬にして凍りつく。
(どうして……? 今日はシノギはないはずじゃ……)
飛龍と深く関わっていることが魁にバレたのだろうか。
それとも、あの時の半グレを取り逃がした罰が、まだ終わっていなかったのだろうか。
最悪の想像ばかりが頭を駆け巡る。冷酷無慈悲な『死神』がわざわざ私の部屋まで出向いてきたという事実に、私はみっともないほど顔を青ざめさせ、指先をガタガタと震わせた。息が、うまく吸えない。
「おい、玲美。誰が来たん……」
ソファから立ち上がった晴樹が、私の異常な震えに気づき、横から顔を出してモニターを覗き込んできた。